映画「インフェルノ」10月28日公開! 映画の見どころを予想!

映画「インフェルノ」が公開されますね。

ダン・ブラウンのラングドン教授シリーズは、ヨーロッパ旅行と西洋美術好きにはたまりません。
「ダ・ヴィンチ・コード」を読みながら「これはハリウッドが好きそうだわー」と思っていたらまんまと映画化されて、ホクホクしていました。

「ダ・ヴィンチ・コード」と「天使と悪魔」からしばらく間が空いて、満を持しての「インフェルノ」!

ヨーロッパ旅行好き・西洋美術好きとして、映画「インフェルノ」の見どころを勝手に予想します。

「インフェルノ」のポイントは、何といっても美しいフィレンツェヴェネツィアの街並みです。これを堪能するためだけの映画と断言してしまおう。

フィレンツェとヴェネツィアは、いずれも北イタリアの都市です。どちらもルネサンス期にブイブイいわせていた華やかな街。
特にフィレンツェはイタリア=ルネサンスの庇護者メディチ家のお膝元ですから、桁違いのゴージャス感と華やかさに満ち満ちています。

壮麗なドゥオモは、イタリアのどのドゥオモよりも存在感がある。

フィレンツェのドゥオモ

フィレンツェのドゥオモ

街のサイズに釣り合っていないくらいのデカさと、赤・白・緑のイタリアンカラーな大理石で彩られた華やかさが印象的です。

そしてメディチ家が発注・蒐集した美術品が街中に溢れているのも素晴らしい。
ウフィツィ美術館の小部屋の隅に追いやられた小作品がダ・ヴィンチのもので驚愕する、なんて体験をそこら中でできます。そこら中でできすぎるので、その内巨匠の作品を見かけてもビックリしなくなるほどです。ローマで「ああ、これもベルニーニね」と思ってしまうようなもので(旅ログ ~ベルニーニに首ったけ! inローマ~)。

ヴェネツィアは、フィレンツェに比べるともう少し機能性重視なカンジ。
港と運河の町なので「要塞」とか「貿易の要衝」とかそういう色が濃い。
何しろ地理的にイスラム世界と向き合っているわけですから、往来する異教徒に見せつけるためにも街には華麗さよりも威厳が求められたのです。

なーんてワタシがヴェネツィアに陰鬱さを感じたのは、天気の悪い冬に行ったせいかもしれない。

サン・マルコ大聖堂

サン・マルコ広場が水浸しじゃなかっただけまだマシだったと感謝すべき、てなくらいにじめじめしてました(旅ログ ~水の都…霧の都? ヴェネツィア~)。

しかし、やはり金持ちの街ですから、屋内はゴージャスです。
ヴェネツィア最古のホテル、ダニエリ。

ホテル・ダニエリ

原作「インフェルノ」ではホテル・ダニエリの前でボートを降りたので、映画にも映るんじゃないかと期待しています。
といっても、外観は地味~な建物なんですけどね。

ピンク色の建物がダニエリ
ピンク色の建物がダニエリ

宮殿との釣り合いとか隣の建物とのバランスとか重視し過ぎて、ヨーロッパの貴族の建物の外観は意外に地味だったりします。その分インテリアに情熱が注がれたカンジ。

フィレンツェもヴェネツィアも観光客が溢れているので、比較的治安は良いです。
イタリアは北部に行くほど人も街もきっちりしていて治安が良く、南に行くにつれ荒れていくという傾向があります。
ただでさえ治安が良いところに呑気な観光客が大量に流れ込んでくるので、街全体がテーマパークみたいな雰囲気になるんですね。
さらにヴェネツィアは車両乗り入れが禁止されているので、無粋な自動車の音や無機質な信号の点滅なんかもありません。それで余計に非日常感が出ます。

いずれにせよ、両都市ともイタリアのみならずヨーロッパ文化の発展の基礎になる街。ラングドン教授ほどの知識がなくとも、そぞろ歩きするだけでも楽しいです。
そのフィレンツェ・ヴェネツィア両方を堪能できるとは、それだけで映画「インフェルノ」を観る甲斐があるってものです。

さらには、イスタンブールまで舞台になっているので「うむ、ダン・ブラウン、いいぞ!」と唸りながら読んでいました。

なぜヴェネツィア・フィレンツェに並んでいきなりイスタンブールが出てくるのかと戸惑う人もいるかもしれませんが、歴史を紐解くとそれほど唐突なチョイスでもありません。
昔の地中海世界は一塊の文化圏で、今でもイタリアの南端に行くと「ほとんどアフリカだな」と思うし、チュニジアでは「ギリシアとよく似てるな」と感じます。

大昔はローマとペルシア、現代ではキリスト教圏とイスラム圏と、両者には深くて長い溝があるように見えますが、実は文化や歴史を共有している分かち難い存在です。

そもそも、原始キリスト教が生まれたのは華やかなローマではなく、イェルサレム。そして同じくアラビア半島のメッカで生まれたのがイスラム。
荒涼とした土地から生まれる宗教に多様性があるわけもなく、堅牢な共同体を築かないと生きていかれないというのが根底にあるんですね。そのために隣人愛を説くか戒律を重んじるかの違い。
極東の島国にいると「似た者同士で何ケンカしてんだか」としか見えませんが、隣同士なだけに諍いが絶えず、恨みも深くなるのでしょう。

で、イスタンブールはキリスト教圏とイスラム圏のぶつかり合いの象徴である都市でして、イタリア半島の都市国家とは貿易でねっとり絡み合い・容赦なく干戈を交えるという仲。特にヴェネツィアとビザンツ帝国はお隣さんですから、関係が深いわけです。
フィレンツェ・ヴェネツィアからイスタンブールと流れるのは当然とも言えましょう。

これまた現代では驚く人もいますが、一時期世界の最先端はイスラム世界でした。
ヨーロッパ文化が足踏みしている間、建築も科学も美術も進んでいたのはイスラムの方で、バグダードやコンスタンティノープル(イスタンブール)こそが世界の中心だったのです。

「千一夜物語」はその頃の雰囲気がよく出ている。
あれを読むとヨーロッパやアジアは未開の田舎扱いで、当時のイスラム圏の世界観がわかって面白いです。

んで、最先端の技術や美術を盛り込んで建てられたのがブルーモスクやアヤソフィア。

20年前の紙焼き写真なので画質が悪い。
20年前の紙焼き写真なので画質が悪い。

ブルーモスクは、間違いなく世界で一番美しいモスクです。
建物の規模といい、モザイクやミニアチュールの壮麗さといい、「天国とはこんな世界か」と驚嘆する美しさ。

これらのザ・イスラムな建物群の中に地下宮殿が残っていて、逆さメデューサが今でも見られます。

メデューサ

湿気むんむんの地下でライトアップされている首。かなり巨大で不気味でした。

メデューサはギリシア・ローマの遺物ですから、フツーに考えると異教のモノとして徹底的に破壊されてもおかしくありません。
しかしイスタンブールには妙に鷹揚なところがあり(ホントに強い者は拘らないのでしょうな)、ギリシアだろうがキリスト教だろうが残せる物は残して再利用や放置をしている。それが高じて現在のアジアとヨーロッパが混在したイスタンブールが生まれました。

混沌としたイスタンブールの街を歩いて「ここはアジアなの? ヨーロッパなの?」と頭の中を撹拌された後だと、アザーンを聞いた直後にメデューサを見ても特に違和感を覚えません。実に不思議な街です。

と、ワタシ的には見どころ満載な3都市が舞台というだけで美味しく感じる映画「インフェルノ」。
映画化に当たり少々食い足りないのは、モチーフがダンテの「神曲」ということでしょうか。

思い返すに、「ダ・ヴィンチ・コード」があそこまで評判になったのは、トム・ハンクスのネームバリューもさることながら、ダ・ヴィンチの作品の魅力のせいにほかなりません。
世界中の人が「モナ・リザ」の微笑に謎を感じ、「最後の晩餐」の群像を浮彫りにした画力に驚嘆して、長い間魅せられてきた。
仮に、そんな人はとても珍しいとはいえ「モナ・リザ」も「最後の晩餐」も知らないという人が映画を観ても、映像でダ・ヴィンチの作品を見せられたら、これは確かに素晴らしいと納得できて物語に惹き込まれるでしょう。これぞ映画の醍醐味です。

しかし、ダンテの「神曲」は、そこまでのパンチはない。
もちろん、「神曲」がなければ成立しなかった絵画も数多くあるし、ヴォッティチェリの「地獄」のデザイン性は今でもハッとさせられます。
が、詩編を読み込んでこその味わいがあるとか、ダンテの「神曲」を基底にしたヨーロッパの地獄観の面白さとか、そういうのは映像でパッと見ても「百聞は一見に如かず」的に理解できるものでもない。
それを考えると、「ダ・ヴィンチ・コード」の映画的成功ほどには「インフェルノ」はインパクトがないと思うのです。

と偉そうに書いておきながら、ワタシは「神曲」は「地獄篇」の途中で挫折しました。
あれはヨーロッパの時代背景を理解してないと面白くない。当時は小学生で知識が足りなかったので、注釈ばっかり読んでイヤんなったのでした。

さて、ラングドン教授シリーズの中でワタシが断トツにつまらんと思ったのは「ロスト・シンボル」です。

ワシントンD.C.の中をちょこまか動くだけだとつまらん!
ジェームス・ボンドとイーサン・ハントとロバート・ラングドンは世界中を縦横無尽に動き回ってくれないと!

と思ったのですが、「天使と悪魔」はローマとヴァチカンだけで充分面白かった。

ま、所詮はアメリカなんて新しい国ですし、数千年の重みがあるローマとは深みが比べ物にならない。
ラングドン教授には今後もヨーロッパで大暴れしてほしいものです。

「天使と悪魔」ごっこの様子はこちらにて;旅ログ ~ベルニーニに首ったけ! inローマ~

スマイスターMagaZineにてコラム連載中!

投稿者:

りんむじんづ

間取図だけで3杯メシが食え、旅のためだけに日々労働し、美味しいものを好きなだけ食べられるようにジム通いに励む、そんなOLです。

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