オシャレビジネスマンへの恋が終わる瞬間

毎朝、同じ電車で決まって出会う男性がいる。

Businessman

年の頃は30代半ばといったところ。
男としては一番脂が乗っている年頃だろう。

ワタシは昔から若過ぎる男は苦手だ。

10代なんて小学生男子と変わりゃしないし、20代も「人生の方針なんて定まっちゃいません」という頼りない顔がイヤだ。
三十路を過ぎるとようようその人らしい顔立ちになって、いっぱしの人間になった感がある。
不惑ともなると大人の余裕とギラギラ感が同居して、ようやく「いいね! たまらんね!」とムラムラできる。
これが還暦に近づくと枯れ過ぎてしまい、あまりよろしくない。

で、件の彼はようやくその人らしさが確立したであろうお年頃で、観察対象としては非常に好ましいわけだ。

どんな男でも三十路を過ぎりゃいいってもんでもなく、三十路を過ぎていいカンジに仕上がってきた男こそがよろしい。
ぼーっと生きてきてぼーっとした顔をしているのはダメだし、だらしなく生きてだらしない体つきになっているのもイカン。

旬な時期に「来し方をどのように過ごしてきたか」で評価が分かれるとは、男とは大変な生き物だと気の毒に思う。
これが女なら、少々のおへちゃでも花の18歳ともなればそれなりに持て囃される。
もっとも、女の旬はあっという間に過ぎてしまい、人生の酸い甘いを嗅ぎ分けられるようになった頃にはもうオバサンと成り果てている。これもこれで気の毒なものだ。

件の彼は、それなりに人生を謳歌してきたというオーラをびしばし発している人だ。
スラッと背が高く、痩せても太ってもいない。顔立ちもそれなりによろしい。
何より、髪型と服装がいつもばっちり決まっている。
決まり過ぎるくらい決まっている。かといって鼻につくわけでもなく、さらりと着こなしている。その辺りから「適度におモテになられますね」とワタシは下種な勘繰りをしてしまうわけだ。

端正な顔立ちを縁取る髪は、清潔に撫でつけられている。
極端に流行を追っているわけではない。モードに走るのは若者と業界人だけでいい。一般のリーマンの至上のヘアスタイルは、似合っていて清潔感があることだ。

そして、スッとした身体を包むのは、その体躯にキレイに沿ったジャケットとパンツ。
揃いのスーツではない。大抵いつもジャケットとパンツはバラバラだ。だが、その組み合わせがいちいちオシャレでカッコいい。

たまにジャケットを外してオシャレ感を演出しようとするリーマンがいるが、狙い通りオシャレになっている人は皆無と言っていい。
ワタシの20年近いOL生活の中で、ジャケットを外してオシャレに仕上がっていると思ったのはたった3人だ。
その内のひとりが件の彼。
シルエットといい、素材のグレードのバランスといい、色合いや柄、合わせるシャツ、どれをとっても文句ない。

さらにピカピカの黒いストレートチップを履いている。雨の日でさえ!
完璧に美しい靴を履いている男というのは、それだけでグレードが上がる。どんなに足元がぬかるんでいようが靴がキレイな男はいいものだ。

手にはエルメスのレザーバッグにiPad。
この辺は、まぁ、若干鼻につく感じがしないことはないのだが、だらしないよりは万倍もいい。

そもそも、やたらとデカいバッグを持っているリーマンの存在が意味不明だ。
故あってのデカいバッグはいい。外回りでモバイルPCを常時携帯とか、愛妻弁当とサーモスを持たされるとか、帰りに音楽教室に寄って美人の先生にサックスを習うとか、そういう事情がある人の荷物が大きくなるのは理解できる。
だが、内勤で特段の事情がないリーマンが過剰に大きなTUMIを持ち運ぶ必要はないと思うのだ。乗車率100%超の通勤電車で邪魔になるだけ。
何なら手ぶらでも何とかなるだろう。
胸ポケットにスマホ、尻ポケットに財布、そして心に太陽を。その方がよっぽどカッコいい。

まぁしかし、ビシッと決まった服装に合わせるなら薄いレザーバッグくらいなら悪くないし、それにタブレットを入れて経済紙でも読むのはいいと思う。
これくらいのことで鼻につくとか言ってちゃイカンと反省するレベル。

仮に彼の挙動が「オレは自分がカッコいいことを自覚してます」という匂いをぷんぷんさせていたとしても、やむなしと思える程度に彼はイケているのだから。

と思っていたのだが、ある日この恋にも似た気持ちが瓦解してしまった。

その日は前の晩から強い雨が降り続いていて、女子どもはこぞって派手なレインブーツを履くような天候だった。
それなのにピシッとプレスされたパンツとピカピカの靴を身に着ける彼。その心意気や、良し。

……と思ってふと彼の手元を見ると、いつものエルメスと同じ手に傘が握られていた。
500円のビニール傘が。

 

…………おおぅ、そこまで決めておいて傘は500円かよ!
と、いたく落胆したワタシ。

これが仮に突如天気が荒れた日なら「あー、傘を持ち歩いてなかったのねぇ」でビニ傘も気にならなかったろう。
だが、前の晩から全国ニュースでもローカル番組でも散々「明日の名古屋の雨はヒドいぞ」と言ってたのに。

いや待て。
ここで数万円の傘を持っていたとしたら?

さすがに完璧なスタイル過ぎて、嫌味じゃなかろうか。
ビニ傘くらいで外していた方が「○○さんも500円の傘なんて使うのね~。カワイイ(はぁと)」と女子社員のウケがいいんじゃないか?

それはそれであざといカンジがして「えー」と思ってしまったワタシ。

……ハイ、通勤電車の中はこれくらいの妄想を膨らましとかないと退屈なんですよ。

【女子目線】デキるビジネスマンのスーツは○○だけ!

スマイスターMagaZineにてコラム連載中!

投稿者:

りんむじんづ

間取図だけで3杯メシが食え、旅のためだけに日々労働し、美味しいものを好きなだけ食べられるようにジム通いに励む、そんなOLです。

「オシャレビジネスマンへの恋が終わる瞬間」への3件のフィードバック

  1. 女性目線は厳しいですね。
    私も昔の職業を引きずってて、見た目の清潔さは気にかけてますが…
    果たして周りの評価はどうか??
    ですね。改めて考えます。
    都会の通勤地獄は大変ですよね
    地方に住んでていーのは通勤ラッシュって何?ってとこだけですね。

    1. まっくサマ
      清潔なことが最優先ですよ!
      オシャレはオマケみたいなもので。
      これはオバサンも同様ですね。

      名古屋の通勤電車は、同乗者の観察ができるだけ車内にゆとりがあるのでラクですね~。

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