誰しも「これでないと」というこだわりはあるはず。
シガーはモンテクリストじゃないと、とか。
チョコレートはジャン・ポール・エヴァンがいい、とか。
爪とぎは穴あき枕のロングが一番、とか。
サッポロ一番は塩が至高。とか。
幼少期、家で食べるラーメンはずっと醤油味だった記憶がある。
具は何だったか。ネギと焼豚とシナチク辺りが乗っていたような気がする。
まだワタシが丼で一人前の量を食べ切れず、麺を小皿に取り分けてもらっていた頃、自分の皿のラーメンを食べながら姉の丼を狙っているシーンの写真が残っている。
そのせいでワタシはずいぶんと食い意地が張ったラーメン好きという印象を家族は持っているが、ワタシはそこまでラーメン好きだとは思っていない。多分「大人と同じように丼で食べているお姉ちゃんが羨ましい」と見ていただけだと思う。食い意地が張っていることは否定しないが。
休日の昼、手軽に食べられるメニューとしてラーメンやチャーハン、焼きそばにお好み焼きといった炭水化物なラインナップの中では、ラーメンは「そっか、ラーメンか」くらいにしかテンションが上がらない存在だった。
それが塩ラーメンの存在を知ってから、ワタシの中でラーメンの地位が急上昇した。
家族で外食したとき、何の加減かラーメン屋(昔ながらの中華そば屋ではなく、ファミレス的なチェーン店)に入り、そこで初めて塩味のラーメンを食べた。
具はキャベツ、ニンジン、モヤシ、ニラなどがどっさり。塩のスープで食べる野菜がたまらなく旨く、ワタシはすっかり気に入ってしまった。
子ども達が「塩美味しいね! 野菜美味しいね!」とはしゃぐのを見て、母は家で食べるときも塩ラーメンを取り入れるようになった。
白菜、スナップエンドウ、タマネギ、具は何でもあり。メインは野菜スープで麺はおまけ。というくらい野菜をどっさり入れた。
塩以外のラーメンを食べるようになったのは、大学を卒業し、福岡に出張したときに「ここはさすがにとんこつでしょう」となったとき。それくらいワタシの中でラーメンといえば塩だった。
というわけで、たまに買うサッポロ一番も当然塩だった。
インスタントラーメンというのは、ときどき無性に食べたくなる。
あの安っぽい乾麺と化学調味料っぽいジャンクな味が恋しくなる。
んで、食べてみると「やっぱりさほど美味しいものではない」と納得し、また数カ月離れて暮らす。というペース。
サッポロ一番塩らーめん(なぜ塩味は平仮名の「らーめん」なんだろう)は、そういうジャンクな気分のときに、いい。
どのコンビニにでも置いてあるから急に食べたくなっても対応できるし、野菜をどっさり入れられるので「多少は身体に気を遣っているんですよ」という欺瞞が通じる。
そんなわけで、ひとり暮らしを始めてから20年、たまに買うサッポロ一番は塩一辺倒だった。
それなのに、2020年、なぜか急にみそラーメンを買ってしまった。
きっかけは、まったくわからない。
急に、本当に突然に「そうだ、味噌を買ってみよう」という気になって、コンビニのカゴに一袋入れていた。
それまでサッポロ一番みそラーメン(なぜ平仮名の「みそ」なんだろう)を買ったことはないと思う。あっても、呑みの帰りにウチで〆のラーメンを作って食べることになって「あなたは味噌にするの? ワタシは塩にするわ」みたいなカンジで人の分を買っただけのハズだ。ワタシが、ワタシだけのために、味噌を買ったことはない。
だからサッポロ一番みそラーメンの味は知らない。
「きのう何食べた?」でケンジがみそラーメンを美味しそうに食べていても「ふーん、ワタシは塩だけどね」としか思っていなかった。
それなのになぜか味噌を買ってしまった。
青天の霹靂。
何が起こったのか自分にもわからない。

……食べてみたら、美味しかった。
味噌ラーメンといえばコーンとバターでしょう。
と勝手に決めつけていたが、コーンもバターも入れなくても美味しかった。
白菜とネギをどっさり、それにニンジン、モヤシ、キクラゲと、それからレンジでチンした卵。
ワタシは野菜をどっさり食べるなら塩だと決めつけていた。
味噌も、野菜と合うに決まっているじゃないか。お前は今まで具沢山の味噌汁を何だと思っていたのだ。
嗚呼、何をもって四十余年もみそラーメンを拒否し続けてきたのか……。
というわけで「やだー、5個パックとか買っちゃう?」とか思うくらいにサッポロ一番みそラーメンにハマっている今日この頃です。
多分、5個パックを食べ切ったら一旦飽きるんだろうけど。

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