抗がん剤はうまくいっていないけれど、ステロイドを飲みながら元気に過ごしていたブリさん。

また抗がん剤を開始できそうならやっていきましょうね、と動物病院で話した3日後のことでした。
夜中にブリ男の嘔吐の気配が聞こえます。
開腹手術して毛玉を取ってもらってから、入院中も含めて嘔吐は一切なかったので久しぶりです。
その直前に夜中のカリカリを食べている音が聞こえたので、その刺激でゲーしちゃったのかもしれません。
吐いたのは毛玉ではなく、恐らく夕食の消化物とさっきのカリカリという気配。
「あらあら、久しぶりにゲーしてびっくりしたねえ」と言いながら掃除し、またベッドに戻りました。
ちなみに、退院日こそ一緒に寝てくれたブリさんですが、その後は椅子でひとりで寝ています。孤高の家猫です。
布団に潜ってしばらくすると、またブリさんがカコカコッとやっているのが聞こえました。
さっきは吐き切れなかったのかな? と「ぽんぽん痛いか〜、大丈夫かね」と声をかけると、ブリ男はちょっとスッキリしたのか残っていたカリカリを食べ始めました。吐いたばっかりだからやめなさい。
片づけ終わってベッドに入り、しばらくするとまた嘔吐。
それを掃除して、眠りきらないうちにまたまた嘔吐。
と、この晩は1時間に1〜2回のペースで吐いてしまったのでした。
朝5時くらいになると落ち着いていて、水も飲み、いつもの通り「ゴハン出せよな!」と目をキラキラさせてきます。
大丈夫かな…? と心配になりつつもウェットフードを用意すると、いつもよりペースが遅いながらも完食し、その後にカリカリも食べたのでした。
しかしこんな異常なペースで吐くのは初めてです。
動物病院の開院を待って電話し、午後に担当獣医師の診察の予約を取りました。
朝ゴハンを食べてからは嘔吐はなかったのですが、病院に行く少し前にまた盛大にゲー。朝食べたモノを全部戻したカンジです。
冷や汗をかきながら病院へ連れていき、エコー検査をしてもらいました。
すると、先日胃の中で見つかった毛玉らしきブツが、腸に入った辺りで詰まっているようです。
完全に詰まっているというより、ぼやぼやんとした輪郭のブツが腸の一部を塞いでいる様子。がんで腸が弱っている子では、サイリウムをちょっと増やしただけではするすると流れていくわけではなさそうです。
そして残念なことに腹水が少し溜まっているそうな。
えーっ、進行の遅いリンパ腫といっても、こんなすぐにいろいろと起きるのか…。
吐いてしまったのでその日のステロイドは服用できていない状態のため点滴で入れてもらい、整腸剤だの吐き気止めなどの錠剤を処方してもらって、その日は帰りました。
帰宅して夕食の支度をすると、朝よりもスローペースながらもほぼ食べ切るブリさん。
その後は吐くこともなく、昨晩ほぼ徹夜だったワタシもその日は早々に寝たのでした。
あくる日、トイレを見ると夜中にウンチをしたようです。
しかし、いつもの立派なバナナでもなければ、下痢でもない。小さなころんとしたウンチです。
そしてそれを砂に埋めずにいたので、元気はなさそう。
朝ゴハンの支度をしていても、ブリ男は大はしゃぎの様子を見せません。
いつもならキッチンの上をうろうろしたりワタシの後をつけたり忙しそうなのに、遠巻きに眺めているだけです。
皿に好物のアニモンダを出してやっても食べません。カリカリも口をつけない。
当然薬もまったく飲めていません。いつもの肝臓の薬も、肝心のステロイドも、昨日処方されたモノもダメ。
そんな状態なので、その日も病院に連れていき、点滴でなんとかしてもらったのでした。
様子が変わったのは、その翌日です。
朝のいつも起きる時間、椅子の上で寝ていたブリさんが、ドタッと音を立てて降りたというか落ちたのが聞こえました。
今は爪が短いので、椅子の高さくらいなら音もなくひらりと舞い降り、これまた無音でベッドに近づいて、ひょいと枕元に乗って、ふんすふんすと鼻息でワタシを起こそうとし、それでも起きないワタシの首をぎゅーっと踏む、というのがモーニングルーティンです。
それがドタッと聞こえてきたのでビックリして跳ね起きると、よたよたと歩いているブリさんがいました。
昨日から食べていないから怠いのかな。それともどこかに痛みでも出たのかな。
とハラハラしながらゴハンの支度をすると、やはり口をつけません。
こりゃダメだと思い、またしても動物病院へ電話しました。
その日の夕方、担当の獣医師を捕まえることができ、もう一度エコー検査をしてもらいました。
すると、問題の毛玉は動いていない様子。
胃腸が全然動いていなくて胃腸の内容物が滞留しているから、このまま放っておくとそこに雑菌が繁殖したりと、よくない状況のようです。
ステロイドと共に胃腸を動かす薬を点滴で入れるので、それで一晩様子を見て変化がなければ再び開腹もやむなしとのことでした。
前回手術してまだ1カ月も経っていないのに。
と、目眩がします。
今は胃が液体でパンパンなので食べないと思いますよ。
と言われたものの、一応水と一緒にカリカリを新しくしてやったけれど興味なさそうです。
そして、いつもなら病院帰りはキャリーバッグやコットをふんすふんすと嗅ぎ「俺、今日これに乗って冒険したぜ!」とドヤ顔をするのに、よたよたと浴室の方へ向かいました。
特に夏はたまに洗面所でまったりしているのでそれかと見に行くと、浴室の床の隅で伏せています。
そういえば、苦手な来客が来ると浴槽に隠れる子だっけ。なんか不愉快な感覚があるんだろうなあ。でも浴槽に入れるほどの元気はないんだな…。
あまり歩き回れないだろうと、浴室内にトイレと水・カリカリ皿を増設したところ、素直にそのトイレを使っていました。
さすがにワタシが入浴するときは「ブリさん、お母さんは風呂に入らないと社会的に死ぬから借りますよ」と抱っこして追い出したところ、小さい声で文句を言っていました。
風呂から上がるときには徹底的に水分を拭き上げて(いつもは雑にしか拭かない)トイレと皿、ブリさんを戻します。
まだ温度も湿度も高い空間で不愉快じゃないのかな…と見ていたら、そのまま寝る態勢に入りました。
次の日の朝というか、夜中の2時半頃、廊下からドタッという音が聞こえて目が覚めました。
ビックリして廊下を見ると、ブリさんがへなへなと倒れ込んでいます。
浴室からよたよたと歩いてきて、途中で転んだようでした。
「大丈夫? ぽんぽん痛い?」と声をかけて近寄ると、大きな目でワタシの顔を見上げ、喉を盛大に鳴らします。
が、その鳴らし方がいつもと違う。
猫は体調が悪いときにも喉を鳴らす。
と、何かで読んだ記憶があります。
この日初めて「ああ、これが体調が悪いときのゴロゴロか」と知りました。
上手く表現できないのですが、なんかいつもと違うんですよね。いつもはバイクのエンジン音の爆音で、今はエンジンの調子が悪そうなカンジというか。
いつもとなんか違う…! と一生懸命デカい生き物に訴えているんだろうな…と思うと、胸が苦しくなります。
とはいえそこはブリさんですから、ワタシが寄り添うと安心するという風でもなく、しばらく声をかけながらブリさんの身体に手を当てたりしていると、鬱陶しいわ! とばかりによたよたと離れていきます。1メートルくらい距離がある方がいいようで。
べったりしてほしくないなら「お母さん、床で寝ると腰が死ぬからベッドに戻っていい?」と訊くと、それは嫌みたいで、よたよたとリビングに戻ってきてドターッと床にへたり込む。
「わかったわかった。お母さん、居るよ」とぴったりくっつくと、また喉をぶるんぶるんと鳴らす。
んでしばらくすると「鬱陶しい」を発動する。
というのを朝まで繰り返しました。
とにかく何か苦しいんだろうな。この苦しさをデカい生き物にどうにかしてほしいんだろうな。
というのはすごく伝わってくるのですが、いかんせんデカい生き物は無力です。
ブリさんを撫でながら「ごめんね、お母さんも何かしてあげられたらいいんだけど、お母さんは病院の先生にお金を積むことしかできないんだわ…」と言うと、「コイツ役に立たん!」とイラつくのか、尻尾をびたーんびたーんと打ちつけて不機嫌全開でした。
こんなときでも尻尾をそんなに力強く振れるのか、と哀しいような笑えるような気分になりました。
連日突発で病院に突撃していましたが、こんな状況なのでその日は予約済みでした。
もう一度エコーで見ると胃腸を動かす薬は効いていないようで、毛玉らしきモノはいくらも動いていません。
獣医師さんは割とのらりくらりとしたタイプですが「これは開腹しないと命が危ういです」とまで断言し、そのまま手術・入院となりました。
その日の夜、獣医師さんから無事に手術が終わったと電話があり、詳細は翌日病院で伺うことにしました。
翌日、予約した時間に病院へ行くと、処置室の隅にある入院スペースに案内されました。
先日の入院時よりちょっと大きなケージです。
脚が萎えているのでトイレは設置されておらず、大きなトイレシートの上で寝ていました。
エリザベスカラーと点滴は痛々しいのですが、今回は術後服は着ていません。前回は生検もあって腸全体を引っ張り出したせいか腹全体を開いたカンジですが、今回は異物をピンポイントで取り除いて傷口が小さいのかもしれません。
ケージの扉を開けてもらうと、すぐにブリ男が立ち上がろうとして、でも上手く立てず、よたよたとワタシの方へ這ってきました。
撫でてやると嬉しそうで、顔をワタシの腹に押し当てて(ケージの位置が人間の腹くらいの高さだからね)、うううう〜っと小さく唸っています。
前回の入院時は、手術翌日は「この世の終わりだ。酷いことされた。もう誰も信じない」みたいな目でぐったりしていたのに、今回は「デカい生き物、迎えに来たじゃん!」みたいなキラキラした目で見てきて、しかもいつもはやらないべったりをしてくれて、可愛いし可哀想だしで情緒大混乱です。
「とりあえず説明しましょうか」と獣医師さんに促され診察室へ移動しようとしても、ブリさんは離れてくれません。
看護師さんに引っぺがされるようにしてようやく離れて、後ろ髪が引かれ過ぎて丸坊主になるかと思いました。
取り出した異物は、やはり毛玉でした。
ブラッシングはブリ男が許す範囲でやっていたつもりですが、それでは足りないようです。麻酔が効いているうちに徹底的に梳いてもらったようで、病院にそんなことをさせてしまってすみません。
ただ、普通であれば吐くなり便と出すなりできる程度なのに、それができないくらい胃腸の動きが悪いようで、がんの影響でしょうとのこと。
そして、よたよたと歩くのは神経の麻痺じゃないかなあ、と獣医師さんの弁。
食べてなくて弱っているからというのもあるかもしれないけれど、それなら四つ足がフラフラしそうなのに、後ろ足の踏ん張りが特に効かないっぽいので麻痺を疑っているそうです。
と言いながら術前・術後の血液検査の数値を見せてもらったら、なんとBUNやクレアチニン、腎臓に関わる数値が異常に悪くなっていました。
仔猫のときから肝臓は悪かったけれど腎臓はまったくだったので、ビックリです。
どうやら動かない胃腸のせいで脱水を起こしているようです。ナトリウム・カリウムなどのミネラルバランスの数値がめちゃくちゃになっていることもそれを示しています。
ゴハンと違って水は飲んでいたのですがあまり吸収できないようで、点滴でも追いつかなかった様子。
胃に滞留していたよろしくない内容物も、胃からでも少しずつは吸収してしまうようで、それで余計に腎臓に負担をかけたようでした。
取り急ぎ手術で異物を取り除いて一命は取り留めたけれど、あのまま放置していたら今日にも亡くなっていたような、危ない状況だったそうです。
そして後ろ足の麻痺は、腎不全から来るものなのか、それとも脊椎周りにがんができたのか、あるいはヘルニアなのか、現時点ではわからないそうです。
ただ、こちらの問題は生死に関わるものでもないし、積極的に検査・治療する必要はないんじゃないかな。と獣医師さん。
それについてはワタシもアグリーです。脳神経関係はまた別の専門病院へ行って、MRIを撮るにも全身麻酔となると、大事です。検査をしたところでリンパ腫を抱えている子が大掛かりな手術・治療ができるわけもなく、それなら寝返りが打てる程度なら慣れた部屋で静かに暮らす方がいい。
と、一気に問題が山積みとなりましたが、まずはゴハンを食べられるようになってから。
そこからリンパ腫の治療をどう再開するか、腎臓は一時的な悪化なのか深刻な腎不全になってしまったのか、ひとつひとつ見極めていかねばなりません。
手術直後の電話で「なんとかおうちに帰れるように頑張ります」と言われたくらいなので、本当に危ないところでした。そこをギリギリ繋ぎ止めてもらったことに感謝しかありません。
獣医師さんの説明を聞き終えて「お母さん、帰るからね〜」とブリさんのケージをもう一度覗かせてもらうと、ご機嫌斜めのようで、今度は壁の方を向いて顔を見せてもくれませんでした。
また少しデカい生き物の信用度が下がったようです。
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