実家で犬を飼っていたとき、犬がタイルの上を歩くと鳴る「カチャカチャ」という音が好きでした。
嬉しくてくるくる回ると「カッチャカチャカチャカチャ」と爪が軽やかにタップを踏み、何とも可愛らしかった。
あと、人間に隠れて玄関から中に入り(当時は外飼いも珍しくなく、というかある程度のサイズ以上の犬が室内飼いというのが珍しかった。少なくともウチの近所では。なのでウチも庭と玄関が犬のテリトリーでした)、廊下を「カッチャカッチャ」と歩いて侵入がバレて、実は2階にいたワタシに「コラっ」と叱られて「カチャチャチャチャ」と慌てて玄関に戻る、なんてのも楽しかったです。

ブリ男と暮らすまでは「猫は足音を立てない生き物だ」とワタシは考えていました。
が、ブリ男は犬と同じように「カチャカチャ」と爪でフローリングを鳴らします。
遊びに夢中になっているときならわかります。
ドドドッとすごい勢いで走ってギュッと曲がるとき、爪を立てて踏ん張って音が鳴るのは理解できる。
でも、ブリ男はゆったりと歩いているときも爪を出して「カッチャカッチャ」と歩いています。
ひょっとして爪が引っ込められないのかしら。
と、ワタシは心配しました。
というのもブリ男がまだ仔猫のとき、部屋の中を駆け回ってその勢いで窓枠に乗ろうとしてそのまま落っこちる、みたいなのを繰り返していたからです。
高い場所にある窓枠ならまだしも、低い脚立からも転がり落ちていました。
んで、その度に爪でギュウッと身体を支えようとしていたから、結構爪に負担だったと思うんですよね。
実際、窓枠から転がり落ちた後は、爪の根本の神経が薄ピンクからどす黒く変色していました。
歩いたりジャンプしたりは平気でやっていたので病院には行かず何となく過ぎてしまいましたが、あれで爪の出し入れの機能がダメになったんじゃないか…と思ったのです。
でもまあ、狭い部屋の中での歩行や跳躍に問題がなければ生きていくうえで支障はないわけだし。
そもそも、狩りのときに爪を引っ込めて忍び寄るなんてシーンは「ここぞ」というときだけで、普段はそりゃ爪を出して地面を蹴っていた方が歩きやすいよね。
と思い直して、過剰に心配するのをやめていました。
血豆的に変色した部分も爪の生え変わりと共に徐々にキレイなピンクに戻ったし、まあいいよね。
それに、ブリ男の「カチャカチャ」は便利でもありました。
ワタシが洗面所で歯磨きしているとき、廊下から「カチャカチャ」と聞こえたら「あ、ブリ男が様子を見に来たな」とわかるからです。
鏡越しに廊下の方を見ると、ドア枠の陰から頭を出してデカい生き物の様子を伺うブリ男の目と合う、なんて楽しみの合図となります。首輪の鈴みたいなものですね。
なのでそのうち、ワタシは「ブリ男は爪を出して歩く生き物だ」と思うようになりました。
が、アイツもやはり猫だった。
爪を引っ込めて歩くことはできるみたいです。
ということにハッキリ気づいたのは、実はここ1年くらいのことです。
それまでブリ男の行動範囲をリビングの中に制限していて、常にワタシの目の届く範囲にブリ男がいたのでブリ男の足音にさほど注意を払っていませんでした。
それが、ペットフェンスを導入して「隣の部屋にブリ男がいるらしい」という状況が発生するようになったのが1年前。

参考:【100均】ダイソーのワイヤーネットで猫のペットフェンスをDIY!
乾燥が終わった洗濯物を洗濯機から取り出して畳んでいるときや、クローゼットの中身を整理しているとき、それにトイレ掃除をしているときなど。
ブリ男は爪とぎの上で昼寝をしていたと思ったのに、いつの間にかワタシの足元にいてビックリ、という事象が発生するようになりました。
仔猫の頃はワタシのやっていることに何でも首を突っ込みたがり、キャビネットだのパントリーだの食器棚だのテレビ台だのの扉を開ければ「おっ、なんだなんだ」とやってきて文字通り首を突っ込んでいたブリ男さん。
その頃は「ワタシが動けばブリも動く」と注意していたのですが、今はワタシがガタガタやっていても「アイツまた何かやっているぜ」と泰然と見ているだけなのでワタシも油断しています。
なので足音もなくブリ男が傍に来ているとマジでビックリします。
気づかず蹴ってしまったこともあるし、心臓に悪い。
本猫は蹴られてもあまり気にしていないようで(もちろんその場では面白くなさそうな顔をしますが)、懲りずに「カチャカチャ」せずに忍び寄ってワタシを驚かせて楽しんでいます。
足音なく歩けるなんて、あなたもやっぱり猫だったのね。
ワタシが自宅ではなく出社して仕事する日は、朝から夕方まで留守番する羽目になるブリ男さん。
お利口さんで留守番しているとはいえ、やはり面白くないようで、夕方ワタシが帰宅するとやけに遊びに誘ってきたりワタシがお風呂に入ろうとすると文句を言ったりします。
先日、ちょっと可愛かったのが、夜寝るとき。
最近は宵の口はテーブルの上で寝るのがマイブームのブリ男さん。その日も寝る前のおやつを平らげた後はテーブルにジャンプして移動し、毛繕いを始めました。
ブリ男と暮らす夏も4回目ともなると「この季節は寝るときにイチャイチャしてくれないしなー」とワタシも諦めがついています(とか言いながら「早く秋にならないかなー」と思っちゃうけど)。
「んじゃブリさん、おやすみなさい。また後でお母さんと一緒に寝んねしてね」と声をかけて消灯し、しばらくスマホでニュースやSNSをチェックした後ワタシも寝る体勢に入りました。
が、何か違和感。
ワタシが寝る頃には聞こえてくるブリ男の寝息がありません。
あれ? と思ったときには、ブリ男がシュッとベッドの上に乗り、枕元で丸まりました。
どうやらこっそりとテーブルを降り、足音を忍ばせてベッドに近づいて、上に乗るタイミングを見計らっていたようです。
なでなでしてやると、ペロペロで返礼してくれるブリ男。
それからワタシの手をつかみ、自分の顎を乗せて目を閉じるブリ男。
可愛いので見ているとワタシの視線に気づいて目を開け、ごろーんと転がって甘えてくるブリ男。
そうか、今日のお留守番は淋しかったんだねえ…。
爪を引っ込めて歩けないのかと心配しましたがそんなことはなく、ブリ男なりに忍び足の使いどころを考えていたようです。
獲物を仕留めるためじゃなくて、飼い主に甘えるためというのが可愛いですね。

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