映画「CATS」は果たしてそんなにヒドい作品なのか?

映画「CATS」を観てきました。

cats

「CATS」は1981年初演の人気ミュージカル。
いろんな猫の人生(猫生?)を歌とダンスに乗せて語る、群像劇です。

日本各地どころかN.Y.にも観に行っちゃうくらい「CATS」好きなので(残念ながら本場ロンドンの公演は映像しか観たことない…)、映画公開と聞くや「おっ、行かねば」と思いました。

ところが映画「CATS」は、アメリカで酷評を受けたそうですね。

えっ、何がダメなの。歌やダンスのクオリティが低かった?
とレビューを見てみたら、酷評の多くは「猫人間がキモい」という点らしいです。
えっ、そこ?

確かに、最初に予告映像を観たときは「せっかく映像化するのに、猫のビジュアルがコレか」と思わないでもなかったです。
今の時代ならCGやアニメーションで猫を自由自在に動かせるハズですからね。実写版「ライオンキング」のように。

でも、「CATS」の醍醐味はダンスです。
それも「人間の身体でこんなにしなやかに猫っぽさを表現できるんだ!」と感激できるのが肝。

だからダンスメインの猫達の舞台衣装は全身タイツかってくらいリーンで、鍛え上げられた人間の筋肉を通して猫らしさを楽しめるようになっています。
だからCGでもっふもふの猫をリアルに描かれたところで「人間の身体で表現しうる最大限の猫」という魅力的な部分がなくなってしまうから、「CATS」は成り立たないことになってしまう。

もうひとつ、「CATS」は猫を描いているように見せかけて、実は人間を描いている作品です。

舞台版だと、巨大なゴミと人間が演じる大きな猫に囲まれて、あたかも観客が猫になったような気分を味わえるという演出。
そして猫達は観客である「猫」に歌いかけるので、観客はますます自分が猫になった錯覚を覚える。
猫達の「人生」は、観客が知っている人間社会と変わることなく喜びや哀しみに満ち溢れています。それに共感して猫とも人間ともつかない、非現実的な感覚を抱きながら歌やダンスを堪能できるという寸法。
そして最後の歌で猫への敬意の払い方や猫の飼い方を諭されて、「あ、ワタシ人間だったわ」と現実に戻ってくるのが楽しいんですね。

なのでどこからどう見ても完全な猫が「CATS」を繰り広げたら、観る側は「これは人間社会と同じだ」と共感し切れず、食い足りないカンジが残ると思います。

つまり、猫とも人間ともつかない存在が演じてこその「CATS」なので、いくら映画化といっても「あの猫人間で演じるのが正解だよね」とワタシは納得していたのです。
なので「猫人間キモい」の酷評は「何じゃそりゃ」と思ったのでした。

 

そして、あちこちのレビューを読んでいたら(英語なのできちんと理解できていない部分もあるとは思いますが)、舞台版「CATS」は観たことないという人が「猫人間キモい」と書いていたりして、ますます「そりゃないわ」と思いました。

映画は、美しい映像と音でドラマを事細かに説明してくれる、非常に優れた芸術です。
対して舞台は生身の人間が目の前で演じるという制約があるから、ドラマを進行するために数多くの「お約束」がある。

ドラマの舞台はゴージャスな宮殿だけど、そんなセットは組めないから何もない空間を宮殿に見立てるというお約束。
死に直面した美少女を、たっぷりお肉のついたプリマドンナがすごい声量で演じても納得するのがお約束。
レオタードを着て猫っぽい動きをしたら、それは猫であるというお約束。

リアルかリアルじゃないかといえば全然リアルじゃないんだけど、そういうものだと割り切って楽しむのが舞台なんですよね。
逆に舞台ならではのお約束があってこそ成立する演出もあるわけで、映画に比べて舞台が稚拙な芸術だというわけでもないのです。

確かに「猫っぽいメイクをして猫っぽく動けば、それは猫」という舞台上のお約束を映画の世界に持ち込んだ映画「CATS」は、やや乱暴だったかもしれません。
が、古き良きロンドンの路地や建物をとても童話的に描いていて、猫人間の「キモさ」をファンタジーとして上手に昇華させていたと思います。

ヴィクトリアを演じたフランチェスカ・ヘイワードのダンスはキュートだったし、ジェニファー・ハドソンの「メモリー」には涙が込み上げてきたし、新曲「ビューティフル・ゴースト」は素晴らしく、改めてアンドリュー・ロイド・ウェイバーは天才だと実感できた。
いい「CATS」だったな、と思いました。

最後オールドデュトロノミーがいきなり観客に語りかけるのが違和感満載というレビューもありましたが、あれは舞台版では「すべての曲が観客である『余所者の猫』に語りかけているものだ」という大前提があるから仕方ないんですよね。
映画は舞台と違って観客とキャストが同じ空間に居るわけではないから、同じ手法を使いづらい。映画版「CATS」では「余所者の猫」をヴィクトリアに演じさせることでそこを上手くごまかしていましたが、「たまにはフォアグラを猫に上げなさい」とヴィクトリアに語るわけにもいかず、ラストの曲だけは唐突に観客を巻き込むことになったのでしょう。

と、元ネタを知っていると「そんなものか」と寛容になれますが、舞台版を観ていない人には「何コレ」と違和感アリアリだったみたいですね。

いやいや、元ネタを知らずにもっともらしく語るなよ。
とも思いますが、誰も彼もが舞台を好きなわけでもなし、仕方ないことなのかもしれません。
舞台版「CATS」のファンとしては、元ネタへのリスペクトが感じられて素敵だと思ったんですがね。

 

あとは「ストーリーがくっそつまらん、意味不明」というレビューも見ました。
くっそつまらんも何も、元々ストーリーなんてあってないようなものなのだが。

「CATS」の原作はトーマス・スターンズ・エリオットの「ポッサムおじさんの猫とつき合う法」です。
物語というより、詩です。

こんな猫がいますよ、あんな猫もいますよ、という詩の集まり。
英国らしい(エリオットは元々アメリカ人だけど)ちょっとシュールな、「だから何?」というものが元なので分かりやすいストーリーがあるわけないのです。むしろこの詩からよく「CATS」を作ったなーと感心するくらい。
映画「CATS」では舞台版では言及していない部分も補足してあって分かりやすくなっているから、「これで意味不明とか、大丈夫?」と心配になるほどでした。

ハリウッドやディズニーのハッキリくっきり分かりやすい映画に慣れている人には、模糊とした群像劇は面白くないんだろうなあ。
なんて、淋しくなりました。

 

と、映画「CATS」を褒めてみましたが、実はワタシ、ミュージカルの映画化ってあまり好きじゃないです。

「レ・ミゼラブル」や「オペラ座の怪人」みたいに歌メインだとあまり気にならないのですが、「CATS」みたいにダンスが魅力的なミュージカルだと、映像化はね。
舞台では見られないアングルやドアップが見られるという利点はあるけれど、ナマでダンサーの技量を堪能するとか、息遣いやバレエシューズの音を感じるとか、群舞の中でどうしても目を惹く魅力的なダンサーに注目するとか、そういうものを楽しめなくてちょっとつまらないのです。
素晴らしいピルエットを映画で観ても「だって撮り直しできるじゃん」と白けるんですよね。

というわけで舞台はやはり舞台で観るのが一番と改めて思いました。

とはいえ、映画「CATS」では、舞台版と違って猫の耳や尻尾が動くというのに萌えました。
イカ耳になったグリザベラとか可愛いです。それだけで一見の価値ありでした。

参考:猫の名前

投稿者:

りんむじんづ

間取図だけで3杯メシが食え、旅のためだけに日々労働し、美味しいものを好きなだけ食べられるようにジム通いに励む、そんなOLです。ブリティッシュショートヘアの男子(ブリ男)との同居を始め、ますます極楽な生活を送っています。

4 thoughts on “映画「CATS」は果たしてそんなにヒドい作品なのか?”

  1. Cats気になっていたんです!
    しばし舞台版も観ていないし、映画どうかな?と。
    舞台ならではのお約束、本当にそうですよね。ウンウンって思います。
    初めて観た時、まだ20歳そこそこだったので、まだ猫たちの哀しみなど理解できませんでした。
    人生後半を生きている今、たくさんの猫に自分が超えてきた何かを感じられるのでは…なんて思って、今Catsをとても観たい気持ちでいます。
    それに、猫萌えがあるならーうふってなれるし、行ってみようかしらん。

    1. yumiサマ
      ワタシも初見はまだ思春期の頃だったので、メモリーの深い哀しみが理解できていませんでした。
      大人になってみるとグリザベラの深い哀しみと、それを乗り越えて明日を歌う力強さにホロリと来て、映画館でウルウルしてしまいました。
      名曲ですよね。

      猫人間の耳と尻尾の動きが超萌え萌えですよ!
      舞台にはない楽しませ方をしてもらえて、ワタシ的にはそれだけでも観た甲斐がありました笑

      ブリ男はビジュアル的にはミストフェリーズだと思っているのですが、中身と体型はバストファージョーンズです笑

  2. ( ^-^)ノ(* ^-^)ノこんばんわぁ♪

    私は、ライオンキング、リトルマーメイドと見て来たんですが、肝心のCatsは観てないんですよ…今年あたり大阪でも観られるかな?と思うんですが…

    いやいや…知ってはいますが…映像化は…どうなんだろう?と??が並びますね
    批評はボロクソですね (≧m≦)ぷっ!

    昨今、なんでも映像化してますが…観なくて文句言うのもなんですが…何だかなぁ…
    小説も漫画も映像化…まだ海外のなら観れるのか?
    でもやっぱり…舞台で観たいです!

    1. まだむサマ
      キャッツ、大阪でも観ましたよ〜。
      ライオンキングと違ってセリフに方言があるわけではないのですが、セットのゴミに地方色が現れて面白いです。

      最近は実写化が多いですね〜。
      何でもかんでも実写化しやがって! 新しいネタはないんかい!
      と思いますが、まんまと観に行ってしまいました〜。

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