新生活の思い出 ~初めてのひとり暮らしのワンルーム~

忙しさにかまけているうちにいつの間にか春になっていて、咲き初めた桜も見ていないのに満開のニュースを聞くようになり。
まだ散らないでおくれ~と祈りながら日々を過ごしていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

桜

さて、この季節になると、頼りない青空を見るにつけ新生活をスタートさせるときの薄ぼんやりとした期待と不安を思い出します。
パリッとした制服を着て満開の桜を見上げたときの落ち着かない気分とか。
就職し、初めて親元を離れてひとり暮らしを開始したときのほんのりとした淋しさとか。

とりわけひとり暮らしを始めたときは生活がガラッと変わったものですから、四半世紀経った今でも印象深い春です。

新卒で勤めた会社は借り上げ社宅の制度があり、家賃補助が出るのはありがたかったけど、住める部屋が限られていました。
入社数週間前の説明会のときに「さあ、この中から部屋を選びなさい」と不動産のチラシが配られ、新入社員同士で時には話し合い時にはジャンケンで部屋を決めたものです。
大学時代もひとり暮らししていた子は「キッチンはガスじゃないと」とか「ワンルームはイヤ」とか「駐車場がないと困る」とかこだわりがあったけれど、ずっと実家の子ども部屋で過ごしていたワタシは特に何もなく、会社から近い新築マンションを選びました。
まだ完成していなくて内覧できなかったけど、新築ならビックリするような瑕疵もないだろうしまあいいか、くらいのノリ。
そんな経緯で借りたのが、こんなワンルームマンションでした。

ワンルーム

ベッドのヘッドボードの壁に出窓が、机の横にはベランダに出られる掃き出し窓が、そしてキッチンにも小窓がありました。
キッチンに窓があるのってすごく好きで、実家で暮らしていたときも窓に当たる雨の音を聞きながら梨の皮を剥いた思い出が深く心に刻まれています。
この部屋のキッチンの小窓は隣のマンションの壁に面していて、そして向かいのマンションもその壁にはキッチンの窓がついているらしく、近くの部屋の煮炊きの気配とか母娘がお喋りしながら調理する様子とかが伺えて、楽しかったです。

とはいえこの部屋のキッチンはいいことばかりではなかったです。
何しろ1口しかない、しかも電気コンロ。パスタを茹でながらソースを作るなんてことすらできません。
なので電子レンジを多用するクセがついたのですが、その電子レンジもキッチン(というか玄関)に置くことができず、部屋の中に置いた小さな冷蔵庫の上に設置していました。
調理中はレンジや冷蔵庫にモノを取りに行く度に、キッチンと部屋を往復しなくちゃならんかったのです。

最初、この「部屋の中に冷蔵庫を置くしかない」という不便極まりない動線の間取りを見たときに「え、ちょっと…」と思わなくもなかったです。
ただ、この部屋に住んでいたときは忙しくて碌に自炊できない生活だったため、毎日イライラする必要はなかったというのが幸いでした。
あと、部屋に置いた冷蔵庫から低いモーター音が鳴っていても平気で寝られるという無神経さが培われ、今でもキッチンの横で寝るという無頓着な暮らしができるというのは利点だったかもしれません。

 

浴室は、追い炊き機能なんてものはない、お湯をザーッと出して浴槽に貯める方式でした。

これも幸いなことに、週の半分は出張でホテル暮らしみたいな生活だったので、あまり不便には感じませんでした。
出張先のホテルの広い浴槽にガス代も水道代も気にせずにたっぷりお湯を張ってのんびり浸かる代わりに、自宅ではほぼシャワーのみ。
出張がない日でも平日帰宅するのは夜遅かったので、そこまで苦痛ではありませんでした。

苦痛になったのは、転職して引っ越した後ですね。
平日夜も時間があるから湯舟に浸かりたいけど、追い炊き機能なんてないからお湯を足しながら寒さに耐えるというバスライフ。
参考:[新居の浴室]極楽ほかほかバスタイムに、かつての極寒風呂を思い出す

水回りの機能といえば、この部屋のトイレは暖房便座もなければシャワートイレもありませんでした。
引越を手伝いに来た親に「後付けのシャワートイレを付ければ?」と言われたものです。

今なら間違いなくそうすると思うのですが、当時は海外旅中にヒドいトイレでも受け入れていたお年頃。「お金ないし、まあいいわ」で済ませていました。

その代わりといっては何だけど、この部屋のトイレはすごく広かったです。今まで住んだ家の中で最も広いトイレでした。
収納がないトイレだったのでトイレットペーパーなどを入れるために棚を置いていたのですが、それでも余裕の広さでした。
今のマンションのトイレは狭いので、広さだけはこの部屋が羨ましいです。

 

さて、肝心の部屋の中。
実家で使っていた家具は小学生の頃から使っているようなモノだったので、独立を機にすべて買い揃えました。

仕事を始めたらそんなに旅行に行けないだろうし…。
せめて部屋でも旅行気分を味わえたら…。
ということで、ホテルライクにベッドを部屋の真ん中にどーんと置くスタイルを取りました。
まさか出張でホテルを渡り歩く生活を送ることになるとは、想像もつかなかったのです。

趣味で絵を描くのでテーブルはある程度広くないと困るっつーことで大きなテーブルを置いていました。
それがつい数年前まで使っていたこの茶色の丸テーブルです。

狭い部屋にセミダブルのベッドと大きいテーブルを押し込んだので、来客用の椅子を置く余裕はナシ。
なので友人達が集まるときはベッドをソファ代わりにしていました。
あの頃はまだ学生気分の延長線上で、何かといえば同期や先輩と集まって鍋パーティーだのビデオ鑑賞会だのやったものです。
今はひとり暮らしなのに椅子が何脚もある生活だけど、大勢集まって騒ぐことはやらなくなってしまいましたね。

 

この部屋に引っ越して最初の夜、誰の気配もない部屋でひとり寝るのは何だか心許ないものだと少し淋しかった覚えがあります。
これがホームシックってやつか…。
物心ついたときには子ども部屋でひとりで寝る習慣がついていたからどうということはないと思っていたけど、家族が同じ屋根の下に居るというだけで安心感があったと思い知った夜でした。
もっとも淋しかったのは最初の夜だけで、いつ寝ようが起きようが自由なひとり暮らしのラクちんさにすぐに慣れ、家族友人との旅行がいくら楽しくとも帰宅してひとりで寝ると「あー、気楽」と思ってしまう完全な独身体質です。

今この部屋に住めと言われたらキッチンの使い勝手の一点だけでノーサンキューですが、コンロと電子レンジの間を何往復もしたのも今ではいい思い出です。

投稿者:

りんむじんづ

20代で購入したマンションは、無事にローンを完済したかと思ったら売り払い、30代でまたまたマンションを買いました。好物はマンションの間取り図。旅とグルメにも目がありません。ブリティッシュショートヘアの男子(ブリ男)との同居を始め、ますます極楽な生活を送っています。

4 thoughts on “新生活の思い出 ~初めてのひとり暮らしのワンルーム~”

  1. りんむさんの記事を読んでいたら、初めての一人暮らしの遠い記憶が蘇ってきました。
    学生の頃に住んでいたアパートは、洗濯機は外だしお風呂はバランス釜だし、冬は寒すぎて毎日こたつで寝ていました笑
    家具も家電も先輩からのお下がりでしたが、初めての自分の城!と嬉しかったのを覚えています。
    その後、就職や転勤で何度も引っ越しましたが、最初に住んだ部屋がやはり一番印象に残っていますね。
    マンションに広々と住んでいる今となってはあの部屋にはもう住めそうにありませんが、懐かしく思い出してしみじみとしてしまいました。

    1. sakikoサマ
      毎日炬燵で寝られる体力がある若さがあったからこそ住めた部屋ですね~。
      今洗濯機置場が外の部屋に住めと言われたらイヤだなあ。学生時代は友人のアパートを見ても「そんなものか」くらいでしたが。
      一度快適な部屋に住んでしまうとそっちの方が絶対いいんですけど、でも仰る通り若いときに住んでいた思い出は強烈ですよね。
      そういえば、夢に出てくる「家」って昔の実家で、独立してから住んだマンションやアパートは一切登場しないです。
      実家で生活していた期間よりマンション暮らしの方が長いのに不思議。

  2. 懐かしき、初めての一人暮らしを思い出しました。
    初めての一人暮らしでワクワクしてたけど、初めての夜ベッドに入りながら「寂しいな…」なんて思ってウルウルしたものです。そんな時代もありました。
    そういえば、私が初めて住んだのはユニットバス(お風呂とトイレが一緒)の物件でした。今思えばよくぞまぁ住めたもんですわ(笑)今は絶対無理ですね。

    1. おかゆサマ
      お風呂とトイレが一緒なのは、広々仕様ならともかくとして、湯船の目の前にトイレとかは落ち着かないですよね。
      あれなら割り切ってシャワーブース&トイレ・洗面台の方が使いやすい気がします。
      あと、トイレットペーパーが湿気てぶよぶよになるのが…。
      昔は安いビジネスホテルとかでしょっちゅう使っていたけど、最近はご無沙汰なので、使い方を失敗してトイレットペーパーをびしょ濡れにしちゃいそうです笑

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